横顔がとてもきれい。
「ねぇオダギリ君。」
休憩時間に隣に座っていた堺さんから声をかけられた。
追っていた文字の羅列から目を離す。
珍しい。
この人から声をかけてくるなんて。
前に一度共演したけど、特に親しく会話をする間柄でもなかった。
彼はにこにこしながら俺の顔を覗きこんでいる。
「ああ、やっぱり横顔かっこいいよねー」
「…は?」
「いやね、本読んでる時の伏し目がちなところとか、斉藤の髪型だと長い毛がちょっと頬にかかってるところとか
ほんっと渋いなぁって思って。」
いきなり何を言い出すんだ、この人。
そういえば、さっきから何と無く視線は感じていたけれど。
「あ、気ぃ悪くしたならごめん!変な意味じゃなくて。」
「、いえ…」
「俺の横顔ってなんかいまいち迫力ないんだよね」
「迫力、ですか…」
「ほら、こーんな目してるから。」
自分の目をピッと下に伸ばした。
思わずふきだしてしまう。
「もうずっとこの顔と付き合ってるから、他の顔になりたいとか別に思わないけど、
時々自分の横顔だけはどうにかなんないかなぁって思っちゃうわけ」
ほぉっと息をついて見つめられる。つい、言葉に詰ってしまった。
そんなにしげしげ眺められても…。
変な人だな、この人。
「…そんな事ないと思いますけど」
確かに堺さんの目はかなり特徴的だけど。
でも彼の人柄を表しているみたいで堺さんらしいと思う。
なんてゆうか、癒し系じゃなくて。
癒し目?
なんだっけ。
ああそうだ。
「堺さんの横顔ってお釈迦さんみたいだし」
何云ってんだ、俺。
フォローになってない。
「…お釈迦様…。」
キョトンとされる。
すいません、そう謝ろうとしたら堺さんが下がった目尻をますます下げて笑った。
「そんなこと初めて云われた。お釈迦様かぁ。」
「…」
「うん。悪くないかも!」
何だか嬉しそうに笑う彼につられて、自分も微笑んでしまった。
邪魔してごめんね、って云われたからそのまま本に目を戻すと、堺さんもまた自分で持ってきた文庫本らしきものを手にとりそれを読み始めた。
ちらり、と堺さんの横顔を盗み見る。
自分で彼をお釈迦様と例えておきながら、なんだか彼の横顔が、天使みたいに見えた。
end
なんとなくある人を好きになってしまった時、
さっきまでの何とも思っていなかったその人の顔が、エラク輝いて見えたりすることってないですか。
オダギリ君の横顔ってセクシーですよね。