魅惑の筋肉トーク  A   










少し緊張しながら彼の…つまり山本耕史の家に入る。

ひとの家に入る時って妙に緊張しちゃうんだよなぁ。

玄関を入ると耕史くんの匂いに包まれた。

思ったよりも小綺麗にしている。

白を基調にした部屋はなんとなく殺風景に見えたけど。

余計なものは置かない主義なのか。

自分ちの膨大な苔達を思い出す。

あれが癒しになるからみんな大好きだけど、さすがに最近調子乗って増やしすぎたかも。

マシーンのお礼に苔あげちゃおうかなぁ。

そしたらこの部屋に緑が増えていいかも。

…ま、そんなことはどうでもいいか。

お茶出すよ、って言ったきり顔を見せない耕史くん。

何やってるんだ?

コツン、と爪先に固い物が当たった。

「?」

…ダンベル。

どす黒く錆びていかにも使いまくってますってかんじ。

筋肉バカ。

まったく。

まあ自分も人の事言えた義理じゃないな。

苔バカ。

クスッと笑ってしまった。

「なに笑ってるんですか?」

両手いっぱいに何やらトレーニング器材を抱えて立っている彼が不思議そうに見ていた。

「ううん、別になんでも」

ごますようにフニャリと笑った。

こんなにいっぱい何時の間に買い揃えたんだっけ。

改めて見渡すと使ってないマシーンが多すぎる。

堺さんにどれあげよう?

腹筋と腕筋なら…この伸びるヤツと、このねじって捻るヤツ。

それからこれ。

簡単そうに見えて以外に効くんだよなぁ。

ああ!

いかんいかん。

あんまり効きすぎたら、堺さんが筋肉マンになっちまう(ないない)

このへんの無難なヤツを…

ヨイショッと。

部屋を出ると、一人で堺さんがにやにやしていたからどうしたのかと思った。

声をかけたら首を傾げて、例のフニャフニャ笑顔を向けられた。

誤魔化されていると解っていながらもこの顔にはつい一緒にフニャリとつられて心臓がジャンプしてしまう。

ああ。

アンタが大好きだ。

と思ってしまう。

大好きだし、抱き締めたいとも思う。

いくら可愛いからといって正真正銘の男相手にこんな感情抱く自分にびっくりしてはいるが。

「それ?」

「それが腹筋とか鍛えるやつ?」

「うん。こん中から適当に選んでくれていいっすよ」

「あぁっありがとー。いや、やっぱり耕史君に頼んで良かったよ!」

堺さんの後ろから光線が出てるような笑顔。

無防備にフニャフニャ笑わないでくれ。

勘違いしちゃうだろ。

俺が持ってきたモノ達を興味深げにしげしげと眺めたり、触ったりしている。

この人は結構好奇心旺盛みたいで、自分の知らないものは熱心に学ぼうとする癖がある。

今だって俺にどうやって使うとか、取っ手みたいなのはどこに効くだとかどうして

この筋肉に効くのかと俺の知らないような事まで聞いてきやがるんだ。

堺さんのこういう細かい所は微妙にウザかったりするんだけど、

それでも少年みたいに熱心な姿の彼はやっぱり可愛くて。

「なんか山南さんっぽいね、」

「へ?」

「そんなふうに夢中になってる姿。山南さんもそんな感じだなぁと思って」

「そ、そうかな」

にじり。

距離をそれとなくつめる。

マシーンの上に乗っかっていた堺さんの綺麗な手に自分の手をそっと重ねた。

好きって気持ちは押さえられない。

というか、俺は昔からあんまり我慢が訊く男じゃないから。

指の節が綺麗で、もう少し小さかったら女の子のみたいだ。

「?」

「堺さん、俺…」


to be continue・・・









頑張って次は18禁書きます。
初耕雅!















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